× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 暑くだれる様な夏の日。熱く汗が垂れる酔うかと思う程の太陽の日差し。 じりじりと肌を焼く感覚はいつも痛い。焼けた後の肌は赤くなって空気に触れる事すら拒みたくなる。 だからいつも塗っておきなさいと言ったでしょう、という母の声を聞くのが面倒でもう既に日焼け止めは塗ってある。 男の癖に、と友達にからかわれれば嗚呼焼けると皮膚がずるりと落ちるんだという冗談を含めて黙らせる。 麻多の人間たるもの、一芸に秀でてなくてはならない。 故に僕は父が学んでいた歌舞伎を学んでいる。 母は日舞を。そして妹も日舞を。 だから肌を焼くわけにはいかないのだ。 周りの友達はそんな事を気にせずに肌を黒く焦がしているが。 羨ましいのか、と問われればそうではない。 ただ何故あんなに楽しそうにしているのかが不思議でなかったのだ。 自分の背丈よりはある草むらの中に身を投じて彼らは笑いながら昆虫類や爬虫類を触り阿呆みたいに笑って遊んでいるのだ。 嗚呼、僕も麻多の人間でなければそうしていられたのだろうかとぼんやり考える事はあれど麻多にいない僕などきっと僕ではないのでしょう。 にいさま、と呼ぶ声がする。 縁側の淵に下ろして揺らしていた足をそのままに、上半身だけを後ろに身体を捻ればそこには可愛いと言われる妹の姿。 常に怯えた表情をしたほの暗い少女。僕の妹の、朝日。 「なあに、朝日」 「お誕生日、プレゼント、何がいい?」 緩やかに顔をほころばせて僕に駆け寄ってくる。危ないよ。 誕生日というものに愛着が無いので別にプレゼントなんてなんだっていいんだ。 友達らは欲しいゲームだの、カードだの、グローブだのボールだのねだるところ僕には何もないんだ。 「そうだね、あの池に咲いてる水仙の花がほしいかな」 「…あの池、ですか」 「うん、美しいっていうから、ほしいんだよね」 「わかり、ました」 苦笑いした彼女はすぐに消えていった。 そんなもの、あるわけないのに。 母のヒステリックと父の怒声が聞こえた頃には朝日はおらず、近くの池で溺死しているのが見つかったらしい。 片手には白い水仙の花を携えて。 嗚呼、僕の所為だ。僕の、僕の。 俺の、 可愛い、かわいい、愛しい、いとしい朝日。 死んだのかもしれない、夏の日を思い出して一人 「死にたい、」 とぼやくのである。 神様どうか僕を殺して俺を殺してあの頃に帰してそして僕はまた同じ過ちを犯さないようにその過去を殺して新しい未来を作って俺はまたあの子を殺してそうしてまた同じ後悔をして死にたくなって嗚呼だから、 “ ”を殺せと何度叫べばいいのだと! PR この記事にコメントする
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