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TW2の麻多さん家の日記帳だったもの。 TW4の目黒さんとか麻多ちゃんとか花楯くんのあれこれ。
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!注!これはアンオフィシャルギリギリの話であり、人様のお子さんをお借りした公式とは何も関係ない話です。
    麻多夜月と春時雨あよさんの当時会った話です。春時雨あよさんの背後様には許可を頂いております。
    尚、これを公式・その他の場所に持ち込むことはありません。ご了承ください。


【Side:A】

初めはただの変わった子としか思ってなかった。
何も考えてないようで、何も見ていなくて、何も言わなくて、何もしない。
よくわからない子。変な子。そう考えられてた。
…多分私も、そう思われてたんだろうけれど。

「春時雨さんばいばーい」
「うん、ばいばーい」

今日は明日までに提出しないといけない調べごとの宿題があって、帰る前に図書室に寄ることにした。
祖母の家に行ってもいいんだけど、大量にある書庫の中から見つけられるかが問題でもあった。
何十段何十列、本の数は何千何万冊は軽く超え、ページ数にしたら数えきれないほどあるのは幼い頃から知っている。
伊達に幼い頃から祖母から魔弾の本を読み聞かされて育ったわけではない。
元々、本を読むのも見るのも聞くのも好きであったから調べ物をするのは嫌いじゃない。むしろ好き。
そりゃ人とわいわい騒ぐのもいいけれど、こう…一人でしんみり?しっとりするのも好き。

学校の図書室は町の図書館よりは小さいけれど、小規模の昔からあるような本屋よりは本は充実していると思う。
少し本が古いのが難点、でもあるかもしれない。
図書室の中には人は2、3人。ただ週末やテスト前でもなんでもないのに図書室にいるのは不思議だな、と。
ここの図書室にはあんまりよくない噂が流れてるから人がいない所か、良くない物もいたりするから人がいる方が珍しいのである。

それよりも、調べ物はというと……本が、見つからない。
「…う~ん」
丁度欲しい本があるであろう場所にぽっかりと穴があいている。
ここにいる誰かが読んでればいんだが、借りていたらレポートをほぼ白紙のまま出さなくてはいけないことになる。
中学3年という大事な時期にあまりこういう事はしたくない…しかしやっていなかった自分の責任である。
「やっぱり、宿題は早めにやっておくべきだよ、ねー…」
こう言ってはしょうがない。誰かが読んでいるか探さなくては。

気づけば寒さが込み上げてきて、もう外は茜色の端が黒くなってきた。
ここの図書室は5時で閉り、閉まった頃にはもう暗くなって道がわからなくなってしまうだろう。
その時間帯になるまでに早く見つけなければ。

「…ぁーたーたか、なー…かーぜーがふーぃー、たぁー…」
誰かの歌う声が聞こえた。あまり上手ではないけど、楽しそうな声。
「あーたー、たかー、なー」
それに続いて、今度は上手だけれど、気持ちが入ってない声。

その声の方を向けば…男の子?と、幼い女の子が一緒に座っている。
見た感じ、兄妹のようで、兄が妹に読み聞かせてて、妹が兄に歌をせがんだ感じである。

「かーぜーがふいーたー」

空気が一瞬変わったような気がした。冷えたような、温度が下がったような。
そんな感覚に錯覚した。

「…呼んでるよ」
「あ、本当だ。じゃあねお兄ちゃん、早く帰ってきてね!」
いつの間にか図書室の入り口から覗いてた友達であろう女の子達がいた。
女の子は立ち上がって女の子達と笑いながら外に出ていった。
一人残された男の子は、座りながらこっちを見た。
「…聞いてた?」
いきなり聞かれてびっくりしたので声が出ず、こくりと頷くしかなかった。
それを見ると男の子はそっぽを向き、椅子の上で体育座りをして俯いて歌い始めた。
小さく歌を歌ってるようだった。詳しく聞き取れなかったけれど、先程の歌の続きみたいに聞こえた。

この歌、とふと思い出した。
確か去年の文化祭の劇中に出てきた歌だ。
タイトルは…「幻想廃人」…確かこの声、歌。主役の人が歌声だ。
でも…主役は女の子だった気がするけど…。

男の子の傍にあった本を見て、自分が探していた本だと気づいた。
「そこにある本、取っていい?」
おそるおそる聞くと、隙間から此方を覗いてきてそっと本を渡された。
「…ありがとう」
そう言うと、酷く驚いたように見えた。
…なんでだろう。

私はやっと探せた本に載っている部分をレポートに写す。
自分が座っていた位置からは彼の座っている位置は、ブラインドから茜色が差して、背中が寂しそうに見えた。
その間も、彼は歌う事はやめなかった。

レポートが書き終わり、他に何か参考になるようなものがないかと本をめくる。
…これ、本当は演劇の本だったんだ。

「終わった?」
気づいたら男の子は目の前にいた。びっくりして変な声が出た。彼はくすりと笑った。
「…変な声」
否、顔は笑ってるけれど、眼が笑っていなかった。
そして、そっと本を取ると図書室を出ようとする。

「……幻想廃人、麻多 夜月。覚えておいてね」

…これが、私と夜月ちゃんの出会いだった…気がする。


【Side:Y】


変な人だと思った。
俺に話しかけるなんて。ただでさえ、奇人変人の麻多、なんて言われてるのに。
可笑しいな、と思ったらまさかの同じような人でびっくりした。
あんまり顔には出さなかったけど。

最初に会ったのは、文化祭で舞台に立った時だったと思う。
観客の中で、暗い中フードを被ってた。しかも猫耳の。それで顔だけは覚えてたんだと思う。珍しいなあ、って。

俺はというと、学校の演劇部の先輩があまりにも役に立たないし下手くそだから入ったはいいけどやる気なんて出なかった。
そこで先輩に怒られて、言いたい事があるなら言ってみろって言われたから言ってみた。
そしたらあっちが勝手に怒ってた。なら、勝負してみろって。実力を見せろと。
…結果は俺が勝った。勝ったからには、文化祭での演目を好きにしていいってことだったから
「幻想廃人」…好きな、作品だったからそれにしてやった。…勿論、相応しくない所は抜いたけど。
ミュージカル仕立てで、主役と歌は勿論自分でやってやった…誰かになんてやらせられない。
むしろ、穢させたくないから、ほとんど自分が指導にも徹底的にやったし、演技にもやらせた。
…ただし、それを最後に俺はやめた。面倒だったし。

妹は、俺が演劇部を止めたのを勿体ないって言ってくれて嬉しかった。
「お兄ちゃんは、ぶたいじょゆうなのに!」って。嬉しかった。けど、あんな所じゃ俺はだめなんだよ。
歌を教えてる時、あの人は入ってきた。別に気にしなかったけど。
妹が帰って、こっち向いてる時はびっくりした。ああ、あの人だって。何しにこっちに来たんだろうって。
そう思ったら、本だった。妹に、歌を教えるための本。
…あんまり関わってほしくなかったから顔をうつ伏せにして、渡した。
「ありがとう」、と笑って言ってきたからびっくりした。
嗚呼、何もしらない人にそんなに笑えるんだってビックリした。あんまりわかんないだろうけど。

自分はどうしてこうなったんだろうと、自分らしくないけど自分を慰める為に歌ってた。
あまり高い声は出せなかったけど。
ふと、思い出してあの本、俺が借りたんだったと思い出して、あの人が書く物終わったら返してもらおうと思ったら丁度終わってたらしい。
足音をなるべく殺して目の前に立って声をかけたらその人はびっくりして変な声を出した。
「…変な声」
くすり、と笑って本を持つと図書室を出ようとする。
嗚呼、どうせだから名前教えてあげようかな。

「…幻想廃人、麻多・夜月。覚えておいてね」

これはただのきまぐれ。
幻想廃人の、気まぐれでしかないんだよ。




おそまつさまでした(^p^)

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