× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 昨日、依夜の手をひいて、誘われていたファッションショーを見に行った。 俺自身、被服のことなんて全然わかんないし、不器用だから針仕事なんてできない。 ミシンでかたかた動かすことができても、手作業で布を縫うことは無理。 だからこそ、すごいとは思ったけど、むしろすごすぎて何がなんだかわかんなかったのが、現実。 見終わって、依夜にデザイン画を見て来いと言うと兄さんが来た。 「どう?僕色に染めた洋服は」 「最悪だね」 「最高の褒め言葉どうも」 そう厭らしく笑った兄さんはすごく嬉しそうだったが、目は笑っていなかった。 これはあの人独特の、表情だが、いつ見ても慣れないし好きになれない。 「…留学したと思ったら、こんな所で勉強してたんですか」 「いいでしょ、僕のやりたい事なんだから。僕は依とは違うんだから」 「姉さんは、姉さんなりに、好きな事、やってます」 「へぇ、あの木偶に好きな事あったんだ?」 「ええ、今は調理師目指して頑張ってますよ」 「ふぅん」 興味なさそうに兄さんはそっぽを向く。 目をきらきらと輝かせ、子供のように(とは言ってもまだ子供だけれど)はしゃぐ依夜を見ていた。 「…依夜は、何も変わらないね」 「大切な人ができてから、あいつは変わりましたよ」 「ううん、変わってないよ。なぁんにも」 「心の内側のまっくろな部分は、何も変わっていないよ」 くすくすくすと笑う兄さんも、何も変わってはいない。 「ああそうだ、早く処分しなきゃ」 裁ちバサミを片手に、兄さんはゆらりと動き始める。 ファッションショーに使われていた服をトルソーに巻いてる人たちを下がらせ、ハサミを、振りかざした。 ざーく ざーく しゃん まだ会場にいた人たちは驚きの声を出して、ざわめき始める。 その中には、唖然とした依夜もいた。 「このままにしたら、洋服は汚れてしまう。人によってね。だから、僕は汚される前に自分で壊すんだ」 にこり、と笑ったその顔は、まさに麻多の子の表情だった。 PR この記事にコメントする
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