× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 関係無いとは私も思っているが敢えて言わせて貰うよ。 「最近学校をサボっているそうじゃないか」 なあ、と呼んだのは昔の学校の先輩である人は図書館の回転椅子の上で器用かつ行儀悪く椅子の上で体育座りをしている。 長い黒髪は傷む事を知らずに綺麗で腰まで伸ばし、前髪を目蓋まで伸ばし真っ直ぐに切り揃えている。 イエローがかったホワイトのカーディガンの袖を親指の第一関節まで隠し、白いブラウスは第一ボタンまで閉じ、黒い紐リボンで首元を飾る。 水色のスカートから黒タイツで飾った細長い美しい足が艶やかに伸びていたが彼女の性格を知る上で、官能的とは思えなかった。 見た目だけは、普通の文学少女であったがちゃんとした成人であり、この図書館の司書である。 目黒さんは、自分を理解しきっているからこそできる自意識過剰人間だからだ。 「…貴方には、関係無いんじゃないですか」 目黒さん、と呼べば彼女からほう、と声が発せられる。 「この間まで先輩だった私に関係無いとは。君も随分大口を叩けるようになったもんだね……今は、麻多くんかい」 「お好きなように呼んでください。貴方と麻多は関係ありませんからね」 「まあそうだね。私と君の今の家について私は全く関係がないからな。」 彼女は読んでいた本をぱたり、と静かに閉じては机に置く。 「まったく。君を変な風に巻き込んでくれて…いつか君の家に乗り込むことになるかもしれないね」 「目黒さんが行っても、切られるだけですよ」 「おや、怖い。そんなに恐ろしいのかい、君の家は」 「ええ、怖いですよ。姉は血に飢えた殺人狂ですし、兄はキチガイ。妹は愛に飢えたヤンデレですし」 「君の新しい家は幽霊屋敷か。嫌なものが色々見えそうだ」 「見えますよ。色々」 静かに時間は流れるこの図書館では場所がほの暗い部屋の隅のためか2人の話し声と呼吸と本を読む音しか聞こえない。 「宮沢賢治か」 「ええ、久し振りに読みたくなって」 「君ってば、そんなにグロテスクなものが好きだっけか?」 「宮沢はそんなにグロテスクではありませんよ。…そういうのも好きですが」 「昔は本も読まなかったのにね、一体どうしたというんだ」 「…これが、今の僕の役ですから」 「ふうん。そうかい」 「興味無いんですか」 「あると言えばある、が。そこまでほじくって人のことを聞き出す程私は趣味悪くないよ」 「冗談を」 「おやバレたかい。君もわかっているじゃあないの」 「伊達に貴方とは付き合いが短くはないですからね。わかっていますよ」 大学の終業のチャイムが鳴る。 その音でここは自分の通う銀誓館ではなく、目黒さんの通う大学の図書館であると思い出される。 目黒さんは椅子から足を下ろし、立ち上がり背伸びをする。 「授業が終わったよ。君はもう帰るんだろう」 「ええ、そのつもりです」 「先生たちに見つからないように帰りたまえよ、見つかったら私も君も面倒だからな」 「貴方には迷惑をかけないつもりですが自分の面倒は自分で片付けてくださいね」 「おや、君に罪を被せようとしたことがバレたか。つまらなくなってきたな」 「遊ばないでちゃんと仕事してください。図書館司書さん」 「仕事はしているんだよ、君と違って」 「僕も貴方と違って勉強しているんですから」 「風邪に気をつけたまえ麻多くん。インフルエンザも流行っているからね。湿度は60%以上に保つんだよ」 「乾燥しっぱなしの図書室にいて何を」 「だからだよ。園の先生達も気にしていたよ。君は元気か、と。顔を出しておやりよ」 「…あそこに、戻るつもりも顔を出す気もありません」 「あの子の思い出が、辛いか」 「…」 「図星か。なら無理はさせない。だが今の家が辛いなら帰っておいで。私はもう家を出ているが」 「貴方がいないなら、戻る理由がない」 「無くもない。あの家は、捨てられた私達の実家だ。」 「……はい」 「それを忘れるな」 目黒さんは、図書室の本の貸し出し手続きの仕事へと戻った。 ひとつの楽園に、救われた気がした。 目黒さんとは夜月が転校する前の学校の先輩であり昔居た孤児院の先輩でもあって事情をそこそこ知ってる人。 頭も良くて運動神経も良くて見た目も綺麗なのに中身が残念な偉そうな人。 麻多に引き取られて名前が変わる前の夜月の名前を知ってる人。 図書館司書、とは言うけれどただの係。見た目だけじゃないただの文学少女。 見えて話もできるしちゃんと対処とか除霊とかできるちゃんとした霊媒師だけど能力者じゃない一般人。 銀誓館実の姿や能力者のことは全く知らない普通の一般人。 PR この記事にコメントする
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