× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 「あれ、夜月は?」 「夜月さまなら、朝早くからお出掛けになさっておりますよ」 「場所は?」 「それが場所も言わずに夜明けと共に…」 「…そうか、ご飯は今日1人少なめでいいから」 「畏まりました」 「今日は、死ぬにはいい日だ」 太陽が一番上の空で輝いている時間帯に彼は居た。 周りは緑と土が多かった。 高い建物などなく、随分遠くまで見える。 「…1年ぶり」 彼はそれに語りかけると周りの腐敗の進んだ草を取り払い、外に追い出す。 丁寧に水をまき、丁寧にそれをふいた。宝物を扱うかのように。 それをまた丁寧に洗い、最後にもう一度水を流した。 一束の線香と、そこから抜き取った二本の線香に火をつける。 優しく置けば、そこには隔離された世界のように線香の匂いが充満した。 まるで彼のいる世界と周りが違うかのように。 買ってきたであろう向日葵をそっとそなえて、彼は手を合わせる。 「じゃあ、ね」 朝日、愛してた。 振り返ることもせずに静かに隔離された世界から出た。 まるで今までいた空間に、彼はいなかったかのように。 そこには、向日葵に囲まれた何も書かれていない小さな墓石があるだけだった。 線香の匂いと、綺麗な向日葵が供えられてるだけであった。 彼の顔は、先程の穏やかな顔から人を見下した表情になっていた。 全てを憎むかのように、全てを消し去りたいかのように。 PR この記事にコメントする
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