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TW2の麻多さん家の日記帳だったもの。 TW4の目黒さんとか麻多ちゃんとか花楯くんのあれこれ。
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突然体が揺れたと思ったから地震だと思った。
でかい、と思った時には積み上げた本はばらばらと崩れ、攻撃してくる。

とりあえず家族を集めようと思って姉達を呼ぼうとした途端に聞こえてきたのは罵声。

「何しているの?電話なんて通じはしないから後でかけなさいな。震源地確認しなさいな。電車も止まってるからこれから帰る子はお泊り覚悟しなさいな」

穏やかなものではあったが、実際この人がこんなに動いている所なんてあったのだろうか。

「母さん、こんなに動いたっけ…」
「さあ?僕覚えてないよ」
「姉はん、動きますなあ…」
「ママ動いてる、の?」

「…ちょっと、乗らないでくれる?」

よく似た二人の顔が覗き見してる俺の上に乗り、さらにあゆりさんが上に乗り、その上に依夜が乗っかるピラミッド。
腰に来る。起きたら腰痛とか嫌過ぎる。様子見たいのに、重すぎて正直顔があがらない。
耐えるだけで精一杯とかうわ。

「ああもしもし?そっちはどう?電車動いているの?動いてないの、ふうん」

「ママ、誰にお電話してるの?」
「さあ…?」
「地方の麻多だよ。電話回線は専用のを使ってるはずだからね」
「何でお前そんなこと知ってるんだよ」

いや俺の上で会話するなよ。

「いい?馬鹿みたいに大きい家や同情を民間にも開放してあげて。食糧と暖と安心を提供してあげなさいな。回礼内人もいるからできるだけ早めに。女性が狙われるわ」

こっちを向いた奥方は、俺たちに気づいたらしく上に乗ってる人たちがざわめく。おりろよ。

「貴方達もやってくれるわよね?」
そう笑顔で言われた気がした。

「依と依月は食事と暖の提供を。私の古い着物を使ってもいいわ。喧嘩しないでね」
「はい」
「はぁい」

「あゆりはまず、東北にいる家族の安否を確認してちょうだい。心配でしょう?」
「お気遣いありがとうございます…」
気にしてないわ、と声が聞こえた。

「依夜は子供達が着たら安心させる為にそういった物を描いたり歌ったりしてちょうだい。服気張りすぎ。」
「はいなの!」

「夜月は駅とかから人の誘導やネットで確かな情報提供と情報収集を。できれば物資の運搬も指示してほしいわ。女中も野郎も使っていいわ。使えるものはなんでも使ってちょうだい。」
腰ダメそうだけど、大丈夫?と聞かれたけど正直腰痛い。
「へーき。あと伊檻も連れてきますんで使える物は使います。湿布とか。」
「くすくす。頼んだわよ」

それぞれがそれぞれの役割の為に準備をする。
依は残っていた炊かれた米でおにぎりを作る。依月はストーブや毛布を一部屋にまとめにして暖めておく。
あゆりは携帯電話から家族にメールを送り、祈る。
依夜は恋人が無事でいてほしいと今は祈った。
夜月は離れた場所に住んでる伊檻を引き連れ、物を運ばせる。本人はネットで情報を拡散する。

それを見た麻多の奥方は美しい表情を恐ろしく冷たく綺麗なものへと変えた。

「それができないだなんて成金野郎にでも成り下がるおつもりで?最早他人事じゃないのはお分かり?今はもう皆他人じゃあないの。わかってるんだったら早く人を救助したり匿ったりしないさいなこのクズ」




「何故勝手な行動を取った」
月詠、と険しい顔で呼ばれれば私は微笑む。
無茶をしすぎた所為かしら。こんなに寝てない日は子供を産んでからだわ。
お布団の中で寝てろ、だなんて無茶な事言わないでほしいわ。

「あたくしはね、生まれた時から芸者で、人を喜ばせることだけが幸せで生きてきたわ」
「だからと言って、勝手に部外者を家に入れては困るんだよ」
「何か見つかってはいけないものでもこの家にはあるの?」
「…無い、が。あまり表沙汰にはしたくないような物は多々あるんだ」
夜人さんが困った様な顔をした。それが可笑しくてくすくす笑った。
「ならば隠せばいいわ。誰にも見つからないように、閉じ込めてしまえば」
「月詠、」

「ねえ夜人さん、あたくしは誰かが困る顔は見たくないの。今回は勝手に体が動いて、体が精神を動かしたの。時間が時間だったから、絶対に泣かせたくはなかったのよ」

そう。
あたくしは。笑ってもらいたいの。自分がどんなに辛くなっても。苦しくても。
それで最期に笑顔が見れたら本望よ。

「女性が被害に遭うが許せないから行動したまでよ。他の家を動かしたのはあたくしも悪いとは思っているわ」
「い、いやそれはしょうがない事だったと私も思う、が…」

「でもね、あたくしは自分がしたことが悪いと思っては居ないのよ」

だから、何も謝らないわ。
例え非難されようとも。闇討ちされても。殺されても。
あたくしはあたくしの信じた事をやったまで。

「貴方のような方がいて、女性は狙われて、女性は体だけじゃない心も傷つくの。そしてその中には誰の子かも知らぬ子を孕んで産む人もいるわ。そんな酷い事、あたくし見たくないの」
「月詠…それは…」
「ねえ夜人さん、貴方の血を持ったあの子は、本当は貴方の罪ではなくて?」
「っ…」
「あたくしわかるのよ。女が恋をする瞳。貴方を見る妹の瞳と同じだった。」
貴方なんて罪作りな人。でもそれに惚れたあたくしの負け。
「女が誘惑して子を孕んだのなら周りは女も子供も殺すでしょう?でも貴方はしなかった。何故?」
「それ、は…」

「貴方があの方を愛していたからじゃあないの?」

ねえ、あたくしは貴方の隣を捕ったけど貴方の隣に置きたかったのは誰?

「今回の事、貴方にとやかく言われたくはないわ。早くあの子に罪滅ぼしなり謝罪なりしなさいな」
「月詠、お前…いつから…」
「いつからも何も、あたくしはフリをしていただけ。それに気づかない貴方はとんだ色木瓜ね」
「嗚呼ッ…私が、悪いというのか…!」

あたくしが、あの子の母であったら良かったのかしら。
そうすれば、貴方もあの子も、苦しまずすんだのかしら。
最初からあたくしは素のままで生きていればよかったのかしら。
たら、れば、なんて虚しいだけって知ってるわ。
でも言わずにはいられないのはこれはただのわがまま。

「貴方が悪いわけじゃないわ。あたくしが貴方を繋ぎ留める事ができなかった、罰だわ」

そう。

貴方の罪は、あたしが弱くて貴方を繋ぎ留めることができなかった罰。


弱い貴方。あたくしが全部背負うから。

弱い貴方。まだ愛してるから。



まだあたくしを、あたしを愛しておいて。
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